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小説紹介『死刑にいたる病』櫛木理宇|目の前の死刑囚は、本当に悪なのか? 紐解かれていく真実とは。

 落ちこぼれてしまった主人公 雅人の元に一通の手紙が届く。
それは24件の殺人容疑がかけられ死刑囚からの手紙だった。

死刑を目前にして、なぜ手紙を出したのか。
そもそもなぜ雅人に手紙を書いたのか。

読み進めていけばいくほど、どこかに救いを求めてしまう一冊。

『死刑にいたる病』作品紹介

あらすじ

かつて神童と呼ばれいた雅人は、田舎から離れた高校で自分が”井の中の蛙”であったことを思い知らされます。そして肥大しすぎたプライドにより、大学生になる頃には田舎に帰れず、大学でも居場所がない日々を送っていました。

そんな雅人のもとにある日手紙が届きます。
それは幼少期に雅人が通い詰めたパン屋の元店主であり、
そして24件の殺人容疑がかけられ死刑囚、連続殺人犯と恐れられる大和からの手紙でした。
引き寄せられるかのように留置所で大和と面会を試みた雅人は、そこで大和からある調査を依頼されます。
それは「立証されている9件の内、8件は容疑を認める。しかし残り1件は冤罪だ。それを証明してほしい。」といった依頼でした。

なぜ繋がりの浅い自分にそんな依頼をしてきたのか、雅人は疑問に思いますが、大和との文通により彼が唯一の理解者であることを感じ依頼を引き受けます。

 

こちらの物語では、連続殺人者である大和が実は善人ではないかという可能性はすぐ否定されます。被害者は、大和の好みのタイプで合う若い少年少女ばかりで、逮捕された事実に対してこう言い放ちます。
「今回逮捕されたのは捕まらないという万能感からくる自惚れであり、もしやり直せるのであれば今度は油断しないでしょう」と反省の色すらなく、典型的なシリアルキラーとして描かれています。文通や面会でも、雅人に紳士的な態度で接しますがどこか良心が決定的に欠如している言動が大和の狂気さを物語っています。
しかし冤罪だという1件に関しては「好みタイプでもなければ、犯行手口さえ違う。他人が行った罪まで被って死刑になるつもりはない」という信念があるらしく、雅人も再調査の依頼を引き受けます。

雅人は作中で、大和の過去を知る多くの人々から情報を集め、大和が一体どのような人物なのか、そして大和の人格は生来のものなのか、それとも環境に歪められてものなのかを確かめようとします。
元教師、同級生、元保護司、元養父など多くの関係者から大和の過去を紐解いていきますが、人によって意見が様々でした。読むのも嫌になるほど嫌悪するような大和の行動を打ち明ける人もいる一方、非常につらい幼少期を過ごしている大和に同情する人もいるのです。さらに大人の大和を知るもので、大和を悪くいう人はほぼいませんでした。

果たして、依頼された1件は本当に冤罪なのか?真犯人は一体誰なのか?
そして、大和が雅人に依頼してきた真意とは
そこが本作品の面白さだと思います。

 

 

おわり

 ☆注意☆

ここからは重要なネタバレを含みますので注意してください。

タイトルである「死刑にいたる病」。
読み始める前はタイトルの意味が分からなかった私は、本書を読み進めていく中で
”幼少期の劣悪な環境をが、人格を歪めてしまう”=
”死刑にいたるほど人格をむしばむ病”であると最初は思っていました。

しかしラストまで読んで見解が大きく変わりました。
”死刑にいたる病”とは、逮捕されてから死刑に処されるまでの大和の、異常すぎる娯楽を指していたんだと思います。この大和にとっての娯楽(お遊び)が病原菌となり、大和に出会う人々に感染させていき、雅人ように大和に魅了されてしまって人々を表現していたのだと解釈しています。

そして大和がサイコパスであることは分かっていながらも、読み進めていくうちに「例の1件には実は何か事情があったのではない」「彼がしてきたことは許されないが、どこか良心が残ったエピソードがあるのではないか」とどこかに救いを求めるように読み進めてしまいました。(中盤からラストにかけての落胆さが半端なかったです・・・)
この話に救いはないんですかー(T_T)

 

本書を読んで、ほんとに作者の櫛木さんを恨みました!(笑)
よくもこんなストーリー思いついてくれたなー!って言いたい(褒め言葉)
これは一週間ほどブルーな気分になりそうです(泣)

本書の内容を知らずで、ここまでブログ読んでいただいた方は、
ラストを想像できてしまったかも知れませんが、
よく練られたストーリーだと思うので、ぜひ読んでいただきたいですね ♪