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小説紹介『ジャッジメント』小林由香|もし復讐が合法化されたとしたら、あなたは復讐を実行しますか? 人が人を裁くことへの葛藤を描いたデビュー作!!

大切な人が殺された苦しみや悔しさ。
「犯罪者に同じ目に味あわせたい」という遺族の願い。
もし復讐が合法化されたとしたら、あなたは復讐を実行しますか?

 デビュー作にしてベストセラー!
人が人を裁くことへの葛藤を描いたデビュー作!!

『ジャッジメント』作品紹介

あらすじ

舞台は、凶悪犯罪が増加する日本。
犯罪に対する処遇に新しい法律が生まれました。
その法律というのが「復讐法」です。

「復讐法」とは、加害者から受けた被害内容を刑罰として執行できるものです。簡単に言うと、大切な人を殺された被害者の関係者が、加害者に対して復讐が出来るということです。
この「復讐法」という法律の適用が認められると、旧来の法律で罰するか、復讐法で罰するかを、被害者により近い関係者が選択することができます。

そして「復讐法」を選択すると、以下を守る必要があります。
・被害内容に則した刑罰でなければならない
選択者自らの手で罰しなければならない
上記のような理由から復讐法は悪法と反対する運動が増える中、復讐法の申請は増加の一途をたどっていました。

 

そんな復讐法の立会人”応報監察官”である鳥谷文乃が本作の主人公です。
本作は以下の5つの構成で成り立っており、鳥谷が出会う5つの事例をもとに復讐法のあり方を考えていく内容となっています。

1章 サイレン

被害者は16歳の少年、加害者は19年の少年。
執行人は被害者の父 天野義明。

加害者は、被害者を4日間拉致監禁し激しい暴行を加えた上で殺害した。刑罰もそれに即いた内容で行われていきます。

加害者の母は「息子を許してください」と懇願してきますが、義明は全く取り合いません。そして義明は「質問に正解したら危害を加えない」という条件で息子に関する質問を加害者に投げかけながら、4日間の刑を執行していきます。

本章では、刑を執行した父の信念と、息子の好きな色、好きな食べ物、将来の夢を投げかけ続ける父の真意が読みどころです。

 

2章 ボーダー

本章では、ある家族間で起きた事件が題材です。

被害者は祖母、なんと加害者は娘エレナでした。
動機は「この人を殺したら、もっと楽しい未来があると思った」といった身勝手な理由。
執行人であるエレナの母 京子は、そんな娘の発言をキッカケに復讐法を選択します。

京子と祖母は、普段からエレナの正気とは思えない日々の行動や言動に恐怖を感じていました。そのため京子はエレナを殺した方が世間のためであると考えます。

本章では、中盤でエレナの友人が刑の中止を懇願してきます。友人から聞くエレナは京子が知る娘とは別人でした。どちらがエレナの本当の姿なのでしょうか。 

3章 アンカー

この章では、通り魔事件の被害者の遺族が出てきます。
本書では唯一執行人が複数おり、それぞれが復讐法を選ぶかどうか題材となっております。

医者を目指す弟を殺された兄。
母を殺された主婦。
婚約中の彼女を殺された男性 が執行人として選ばれます。

復讐法を選択しなかった場合、被害者には責任能力がなかったということで不起訴になるという状況で、3人がどのような判断をしていくのか、そして選択を迷っている執行人に対する世論の反応が本章の読みどころです。

4章 フェイク

事件の発端は子供の喧嘩であり、被害者は少年、加害者は喧嘩相手の母親でした。母親は喧嘩の仲裁に入る際に子供を殺害してしまいます。執行人は被害者の母親です。

本章での加害者は霊能力者であり、ある団体の教祖を務めていました。霊能力者である加害者は、獄中で様々な事件の犯人を言い当てます。その力を信じる世間は加害者を本物や神と称し、逆に執行人である蒔絵に逆に非難が集まります。

被害者であるはずの蒔絵になぜ「人殺し」と非難が集まらなければならないのか。

 

5章 ジャッジメント

本章では、虐待で娘を殺してしまった夫婦への復讐です。
執行人は、被害者である少女の兄 隼人です。

執行内容は虐待内容と同様に、食物を与えず衰弱死させるというもの。長期間に及ぶ少年の復讐が行われる中、少年と心を通わていく主人公 鳥谷の心情にどういった変化が現れるのかが読みどころとなります。

おわり

復讐法は選択者自らの手で罰しなければならないという重圧が被害者にかかってきます。刑の執行後も、加害者と同じ殺人者になってしまったという思いが拭えない被害者も多くいるため、本作でも選択を迷っている場面も出てきます。
しかし昨中での復讐法を選択しなかった場合の世論の反応は、「被害者を愛していなかったのではないか」、「自分の手は汚したくない卑怯者」、「他の被害者の為にも復讐法を選ぶべきだ」などの誹謗中傷があります。

これらの復讐法を選ばなかった遺族への世論は非常に残酷ではありましたが、現実でもあり得る反応ではないでしょうか。それがたとえ正義感からくる意見だとしても、多から少なかれ傷つけてしまうと思います。そういった事態に直面した場合、世間の反応として正しいのは”見守ること”なんだとつくづく思いました。
皆さんも被害者家族や関係者の立場になったつもり考えてみてください。

 

本作を構成している5つの話は、全て独立しているためどこから読んでも問題なく、1つ60ページ程なので大変読みやすくなっております。内容は少し重めですが、読書が苦手な方にもオススメしたい一冊になっているため是非読んでみてください ♪